「工場萌えクルーズ (製鉄コース)」に行ってきた!

 かれこれ半月近く前のことになりますが、去る8月29日に「工場萌えクルーズ」というツアーに参加してきました。
 このツアーは「工場萌え」の名の通り、かの有名な写真集の作者である大山顕氏と石井哲氏両名のプロデュースによる産業見学ツアーです。京浜運河を船で巡り、普段は目にすることのできない建造物を間近に見ることができるのが何よりの魅力。幾度かのプレツアーを経て、この夏に定期運航が開始されました。
 ツアーコースは、圧倒的な存在感で鎮座するJFEの高炉が見所の「製鉄コース」と、複雑な配管が魅力の化学プラントを多数見られる「化学プラント」コースの2種類があり、どちらのコースも所用2時間半ほどで1名につき4,000円(記事執筆現在)です。
 2つのコースのうち、今回僕が参加したのは「製鉄コース」。この選択に特に理由があった訳ではなくて、単に一緒に行った友人との日程的な都合によるものです。たまたま都合の良い日に運航されるのが製鉄コースだったという訳ですね。

集合場所「ぷかり桟橋」とクルーズ船「オリエンタル号」

 ツアーの集合場所は横浜みなとみらいにある「ぷかり桟橋」。みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩5分程度の所で、パシフィコ横浜の国際会議場とインターコンチネンタルホテルの間を抜けた先にある、こじんまりとしたかわいらしい桟橋です。
 集合時間の14:40になると添乗員のお姉さんが待合室にあらわれて予約番号と氏名の照会を行い、さらに出航時間の15時が近づいてきたとき、水上バスを2周りほど小さくしたような小型の船が桟橋に入ってきました。我々を工業地帯へと運んでくれる「オリエンタル号」です。
 なんというタイプの船なのか詳しくわからないのですが、ソファーが設置された客室とその屋上を利用したデッキのある非常にシンプルな船でした。
 このあたり、桟橋にしても船にしてもレポートをするつもりでいたにもかかわらず写真を撮り忘れてしまったことは反省です。
 ともあれ、参加者全員が乗り込んだ所で船は時間通りに出航しました。

船は京浜工業地帯へ

 出航と同時に上部デッキが開放され、我々参加者はこぞって移動しました。日差しの強い日だったので潮風がとても心地よかったです。間もなくして船が桟橋を守る防波堤を出ると多少揺れるようになりましたが、後から考えるとあれはほんの序の口でした。
 さて、船はほぼまっすぐに京浜運河に向かって進みました。大黒大橋を越えたあたりから、普段目にしている景色とは明らかに異質の風景が広がり始めました。以下、写真と併せてご覧ください。

東京電力 横浜火力発電所

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 大黒大橋を越えてまず見えてきたのは、巨大で美しい煙突を備えた東京電力横浜火力発電所。恥ずかしながら、僕はこんな所に発電所があるなんてちっとも知らなかった!
 この時点ではとても良く晴れていたので、まずポジフイルムを入れたのはとりあえず正解だったと思う。

  • ZENZA BRONICA SQ + ZENZANON S 80mm F2.8
  • FUJiFILM RAP ASTIA 100
  • F/11? 1/125? ISO100

本牧ふ頭 ガントリークレーン

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 火力発電所を左手に見ながら船は大きく右に曲がり、首都高速湾岸線をくぐって東京湾に出る。本牧方面に目を向けると見えてくるのが「キリン」の愛称でおなじみのガントリークレーンだ。
 運河から東京湾に出ると如実に波の高さが変わった!まっすぐ立っていることも困難なほどの揺れで、ただでさえ水平の取りづらいウェストレベルファインダーでは非常に苦労した。

  • ZENZA BRONICA SQ + ZENZANON S 80mm F2.8
  • FUJiFILM RAP ASTIA 100
  • F/11? 1/125? ISO100

東京ガス 扇島シーバース

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 本牧ふ頭の反対側、船の右舷から左舷に目を転じると不思議な建物が見えてきた。陸地から独立している人口島のようで、コンクリートの無機質な色合いは人を寄せ付けない秘密基地のようにも見えた。
 建物の正体は東京ガスの扇島シーバース。一部の大型船舶などは運河の中には入ってこられないため、このような施設で原料などを揚げるらしい。タイミングが合えば、独特のフォルムを持ったLNG船が接岸している所に出会えるとのことだが、残念ながらこの日はお目にかかれなかった。

  • Olympus PEN E-P1 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 x RICOH GW-1
  • アートフィルター:デイドリーム
  • F/8 1/640 ISO200

よりにもよって熔鉱炉を撮り損なう

 撮っている時点で手応えが全くなかったのですが、よりにもよって一番の見所であるJFEの熔鉱炉を撮った写真はどれも見るに耐えないものばかりでした。
 原因としては、被写体に対してレンズの画角があっていないというのが一番大きいかなと思います。僕はズームレンズという文明の利器を持っていないので、構図を決めるには被写体に適した長さのレンズを装着した上で、自分の体を動かさなくてはいけません。しかし、高い波に揺られる船の上ではどちらも躊躇せざるを得ませんでした。
 これは反省するよりほかないです。次の機会にはこの点を踏まえて是非リベンジしたいと思います。

東亜石油 水江工場

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 熔鉱炉を撮り損なってから集中力を欠いてしまったが、この複雑怪奇な構造物のおかげで多少は調子を取り戻せたように思う。地上からでは近づくことができないこの姿を間近で見られるとあって、熔鉱炉と並んで製鉄コースの目玉となっているとのことだ。
 うす雲が広がり日も下がりつつあったが、ネガを使ってかなりハイキーに撮った結果、「気怠さ」といったような空気が表現できたのではないかと思っている。

  • ZENZA BRONICA SQ + ZENZANON S 80mm F2.8
  • FUJiFILM PN400N PRO400
  • F/11? 1/125? ISO400

三井埠頭 2種のクレーン

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 東亜石油の工場が見られる運河の横道でUターンをすると、船はぷかり桟橋に戻り始める。その復路の途中で見られる一つが三井埠頭にある2種類のクレーンだ。クレーンの中にあって異形の姿は神々しくすらあるように思う。
 広がった薄雲のおかげで、空は時折ヤコブの梯子を降ろした。逆光にはなるが背景としては効果的である。

  • Olympus PEN E-P1 + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8
  • アートフィルター:デイドリーム
  • F/10 1/1000 ISO200

ユニバーサル造船 浮きドック

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 工場萌えクルーズ・製鉄コース最後の見所は、これまた「秘密基地」的要素のある、ユニバーサル造船・京浜事業所の浮きドックだ。ドック自体が浮き沈みして船を出し入れするという仕組みを聞いて、思わず頭の中でサンダーバード的なBGMが流れてしまった。
 右端のクレーンが見切れてしまっていて悔やまれるが、ちょうど補修中の船がドックの中に収まっていたのは幸運だった。

  • Olympus PEN E-P1 + Canon New FD 24mm F2
  • アートフィルター:デイドリーム
  • F/8? 1/640 ISO200

そして船は帰った

 浮きドックを離れた後、船はふたたびみなとみらいのぷかり桟橋に戻りました。このツアーには料金にワンドリンクが含まれているのですが、撮影に夢中だった我々はここでようやく飲み物を得ました。
 出航から2時間半。太陽は西に降り始め、空が橙色に染まり始めていました。おそらく9月の後半から10月の前半にかけてであれば、夕焼けに染まる工業地帯などという画も狙えるのではないでしょうか。
 短い時間でしたが、船に揺られて潮風にも当たりっぱなしだったのでそれなりに疲れました。しかし、日頃は目にすることがないものをたくさん見ることが出来た満足感も確実に感じていました。
 その後、横浜の飲み屋で友人たちとツアーの感想などを肴に酒を呑んで、それぞれ帰路につきました。

参加者特典の特製パンフレット

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 これは乗船時に参加者に配られた特製パンフレット。ツアー中の各スポットが解説されている。
 手前のテキスト部分はナイショということで意図的にぼかした。

  • Canon EOS 30D + SIGMA 30mm F1.4 EX HSM
  • マニュアル
  • F/4 1/100 ISO100 + クリップオンストロボ発光(天井バウンス)

ツアー航路と撮影場所一覧

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まとめ

 その筋では有名な人物のプロデュースによるツアーということと最低催行人数20名という条件から、当日はそれなりの人数が集まるのだろうなと予想していたのですが、いざ船に乗ってみると参加者は我々を含めてたったの6人しかいませんでした。おそらくは定期運行開始後初めての催行ということもあって、半ば意地で実施したのではないかと思います。ただ、写真を撮ることだけが目的だった我々にとって、少人数でも決行してくれたのはありがたいことでした。うん、まあ・・・自分も含めておっさん6人がただひたすらに黙々と写真を撮りまくる光景は実にシュールでしたがw
 4,000円という値段は決して安くなく、3,000円以下の価格設定であればもう少しお客さんも集まるのでしょう。カタログなどにも経費がかかっているようなので、なかなか値下げは難しいかも知れませんが、このツアーが早々に打ちきりになってしまわないか心配しています。
 また、船でのツアーということで揺れなどを心配する方もいらっしゃるでしょう。実際、僕が参加した製鉄コースでは運河から東京湾に出たところで、立つことが出来ないほどに揺れ始めます。船が小型で、かつ陸地に対して平行にゆっくりと走るので横波をもろに受けるのです。まずもって乗り物に弱い人や小学生以下のお子さんには厳しいかと思います。
 もう一つの化学プラントコースは湾に出ずに運河の中だけを行き来するので、バスに酔わない人であればおそらくは大丈夫でしょう。製鉄コースでは見られないスポットにも行けるので、参加してみたいけど船酔いが心配、という方は化学プラントコースで検討してみてはいかがでしょうか。
 撮れる写真については、ご覧の通りの有様と言った感じで、にわか者が撮っても大した画にはなりません。しかし、ある程度装備を考えていけば、割と迫力のある写真が撮れるんじゃないかと思います。例えば、以下のような組み合わせなんていかがでしょう。

 三脚は必要ありません。かえって邪魔になるし、倒してしまう危険性もあります。確かに船上で水平を撮るのは至難の業ですが、人体式手ぶれ補正で対応するほうが無難かと思います。波の揺れは周期的なので、タイミングを合わせてシャッターを切れば大丈夫。
 個人的には、やはり溶鉱炉を上手く撮れなかったことが悔しいです。いや、まあそれ以外も褒められた出来じゃないんですが・・・。しかし、反省すべき点は見えているつもりなので、これを次回に活かして今度こそちゃんと撮ってきたいと思っています。
 潮風が冷たくなる前、10月中にはもう一度行っておきたいなあ。その時は、今回よりも良質の写真とより詳しいレポートがこのブログに書ければと思います。

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