石川陽写真展「SINGLE K」

　今週ルデコで行われてるもうひとつの写真展、石川陽さんの個展「Single K」を見に行ってきた。
　作品は一人暮らしをしている様々な年代の男女の家のキッチンをひたすら撮るというもので、性別や世代によるキッチンの使い方の違いが大変に興味深い内容だった。
　テーマ自体の面白さもさることながら、撮影技法についてもホワイトバランスを固定することでわざと色被りをさせ、そのキッチンを照らしている照明の色、つまりはそこに暮らす人が日々浴びている光の色を、写真を見る我々にも感じさせるように工夫されていた。
　作品の展示は被写体となったそれぞれのキッチンごとに区切られており、キャプションとしてそれぞれ住んでいる人物の年代と性別、都道府県と間取りが添えられている。それらを順に見ていくと、キッチンの使い方における男女や世代による違いを明確に見て取ることが出来るといった趣向だ。特に男性だと、20代の人のキッチンはお世辞にも綺麗とは言い難いのだが、これが30代になると一人暮らしの経験を積み経済的な余裕も大きくなるからか綺麗に使う人が増えたりしてとても興味深いのだ。
　作品点数が非常に豊富で、撮るのはもちろんだが取材交渉だけでも大変なご苦労だったろうと想像する。写されているキッチンは、夕飯を終えて片付けが済んだばかりと思われるようなシーンが多く、石川さんのこのシリーズにかける意気込みとテーマに迫る根気を強く感じ取ることが出来た。
　在廊中であった石川さんご本人にお話を伺ったところ、このシリーズでは、男女や世代間および個人個人の違いだけでなく、時代性による違いなどが見て取れるようになるかなと期待しているとのことで、これからもより長いスパンで作品制作に取り組んでいかれるとのことだった。10年や20年といったスパンで撮り続けていったとき、このシリーズは果たして何を見せてくれるのだろうか。今後の石川さんの作品発表が非常に楽しみだ。